鬼怒沼の草紅葉
奥鬼怒温泉郷のさらに奥、栃木県と群馬県の県境に位置し、標高2000メートルを超える日本一高所の高層湿原として、また、大小47個(48個とも)の沼が散在し、鬼怒川の水源と言われている鬼怒沼を訪れた。
女夫渕温泉の大駐車場に車を駐め(ここから先奥鬼怒スーパー林道は一般車通行禁止)、 比較的歩きやすい川沿いの遊歩道を1時間半ぐらい進むと、奥鬼怒温泉郷の入口八丁の湯に到着する。
さらに10分程度で加仁湯へ、そしてその奥、日光沢温泉が現れる。
奥鬼怒温泉郷の最奥、日光沢温泉
日光沢温泉を過ぎると本格的な登山道となる。2時間程度急坂を登りつめ、落葉樹と針葉樹の混じったなだらかな林を抜けると、突然眼前に鬼怒沼が出現する。
女夫渕から距離にすると10キロ程度。
鬼怒沼には木道が整備されており、途中数カ所にベンチもある。ちょうど草紅葉が終盤を迎えていたが、木々の紅葉はまだまだこれからといったところ。
今日は、雨こそ降られなかったものの濃い霧がかかり、白根山や燧ヶ岳など、周囲の眺望を堪能することができなかった。
それにしても、山上の静けさのなか、その湧いては過ぎていく霧を静かに見つめていると、伝説の「衣織る姫(きぬおるひめ)」が現れるのではないかと思われてしかたがない。
「この原に一人の姫が住んでいた。たまさかにこの原を訪れる里人は、美しい草花の咲き誇る間に、姫が機(はた)を織るおさ(ひ)の音をきくのが常であったが、この衣姫(きぬひめ)と里人の呼びなした姫の姿を見たものはついぞなかった。
しかるにある5月の日の暁この原を訪れた一人の若者が、美しい原の景色に見入っている時、池の面に漂う白い霧の中から、おさ(ひ)を手にしたけだかい乙女が現れ、見る人のあるとも知らず、水の上をすべって岸に近づきながら、笑いを浮かべて百花の乱れ咲く原に足を入れようとした瞬間、若人の影に驚いて、振り返りざまに手に持ったおさ(ひ)を投げつけて、かき消すごとく姿を隠してしまった。
若者は三日を過ぎてから、気を失ったままに家に連れ戻されたが、熱を発して七日の後にはすでにこの世の人ではなかった。
それ以来、この原にはおさ(ひ)の音の響きも跡を断ったという。」
武田久吉 著 「尾瀬と鬼怒沼」 1996年刊 平凡社 より抜粋
この時期、当然のこととはいえ花が少ないが、女夫淵から八丁ノ湯への路傍に目立っていたのがアザミの一種
それにしても、女夫淵 → 鬼怒沼 → 女夫淵 の往復20キロの行程を、7時間以上かけて歩くのは、結構しんどかった。
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