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June 2009

2009.06.28

会津駒ヶ岳の高山植物

 「湿地の低所にはハクサンコザクラ、・・・・・またやや傾斜地にはコバイケイソウ、ショウジョウバカマ、イワカガミがあり、・・・・・。そして、この吹きさらしの露出地とも言いたい個所の長い冬を思うとき、一度植物の生活の内的に立ち至って考えれば、お花畑はたちまち立体味の画像を網膜に強くやきつけつつ、なんとも言えぬ涙をすら誘おうとする。喜びとも、感謝ともつかぬ情をそのうちに加えつつ。」
        武田 久吉 著 「尾瀬と鬼怒沼」 1996年 平凡社 刊 より抜粋 

  2009年6月27日、会津駒ヶ岳周辺で出会った高山植物たち。 
 滝沢登山口から山頂まで、標高や植生に応じて、様々な花が出迎えてくれた。

 標高の高い駒ノ大池や尾根直下の湿地で咲き始めたハクサンコザクラ
 駒ノ大池周辺で見頃を迎えるのにはまだ時間がかかりそう。

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 雪がとけて間もない湿地の木道沿いにはショウジョウバカマが目立っていた。

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 イワカガミも次々と花をつけていた。

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 駒ヶ岳の頂上直下や標高の高い登山道の林のふちにはラン科のツバメオモトが咲いていた。

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 樹林帯のトレイルの両側で、一番目立っていたのが群生するミツバオウレン。

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 所々でサンカヨウも白い花をつけていた。

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 ゴゼンタチバナや

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 タケシマランも

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 標高が低くなるとミツバオウレンに代わってマイズルソウの群落が現れる。

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 マイズルソウに混じってユキザサも花をつけている。

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 ツクバネソウも、その目立たない花を咲かせていた。

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 この他にも、エンレイソウやコミヤマカタバミなども目についた。

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2009.06.27

高山植物と眺望の山 会津駒ヶ岳

 南会津を代表する会津駒ヶ岳(標高j2132メートル)は、その尾根の長い穏やかな山容と、眺望の良さから、多くの人に愛される名山で、登ってはじめてその素晴らしさを体感することができる。

 駒ノ大池から眺める会津駒

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 「会津駒は人ずきのされる山である。会津駒は静思の山。そして思い出の表現のような山である。幻想の曲のあらわれとも言いたいその山の持てる曲線。
 目つむりて思うにふさわしき山、おお会津駒。その名はいつまでも若い旅人の愛すべきメモの1つに残るだろう。」
         武田 久吉 著 「尾瀬と鬼怒沼」  1996年 平凡社 刊 より抜粋

 未明より愛車をとばし、朝の6:00に滝沢登山口より入山する。
 車は林道沿いの空き地に駐車することになる。
 (登山口の場所はここをクリック)

 滝沢登山口

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  ミズナラやブナの新緑がまぶしい登山道を喘ぎながら急登すること90分で、唯一の水場へ到着する。
 水場は登山道から50メートルほど下ったところにあり、苔むした岩の間から清烈な水がしみ出している。
 急な登山道には、マイズルソウやユキザサ、ツクバネソウが多く見られた。

 水場から10分程度で、なだらかな登りとなる。
 木々も広葉樹から針葉樹に変化し、トレイルの両側には、ミツバオウレンやタケシマラン、エンレイソウにサンカヨウと、たくさんの高山植物が出迎えてくれる。

可憐なミツバオウレンの群生

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 樹林帯を抜け、目指す会津駒の頂が見え隠れするようになると、林床にはイワカガミやショウジョウバカマ、イワナシが目立つようになる。

 イワカガミ

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 展望が開け、明るさに心躍ると、トレイルが木道に変わる。
 そこから山頂までは湿原が続き、残雪の間から、可憐な高山植物があちこちで顔を出していた。

 木道の先に駒ノ小屋が見える。

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 駒ノ小屋直下の湿原で、咲き出したばかりのハクサンコザクラに出会うことが出来た。
 雪田を代表する高山植物で、ここ会津の人たちは、親しみをこめてナンキンコザクラと呼ぶようだ。

 「ハクサンコザクラにおどる山の陽のなごやかさよ。ハクサンコザクラにたわむれる山の風の柔らかさよ。駒は前になだらかな肩をふっくりとさせて、夢と現の境に旅人の心を引き入れる。」
        武田 久吉 著 「尾瀬と鬼怒沼」  1996年 平凡社 刊 より抜粋

 会津駒を代表するハクサンコザクラ

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 木道沿いで一番目についたのがショウジョウバカマ

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 残雪の中を登りつめると、駒ノ小屋とトイレの建つ、そして雪がとければ一面のお花畑になる駒ノ大池が美しい、尾根筋に出る。
 駒ノ小屋で小休止後、会津駒の山頂を目指す。
 しばらくは残雪の中を歩かなければならないが、それもまた楽しい。

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 会津駒ヶ岳山頂直下からの眺望が素晴らしい。空気の澄んだ日には、東の日光連山や白根、南に尾瀬の燧や至仏、上州の武尊、西に越後三山と、名山が一眸できる。
 また、南に続く稜線上には、今通ってきた駒ノ小屋や駒ノ大池も見ることができた。

 山頂直下から南側の眺望(ちょっと霞んでいる)

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 山頂に着いた時、9時を過ぎていた。山頂には一等三角点の標石がある。
 360度開けているが、笹や小木で視界が遮られてしまい、満足な眺望を楽しむためには駒ノ小屋方面か中門岳方面へちょっと降りなければならない。

 山頂

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 山頂直下、中門岳方面へちょっと降りると、北側の大展望が得られる。
 
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 山頂からちょっと降りた西側の林のふちで、ツバメオモトにも出会うことができた。

 ツバメオモト

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2009.06.20

日光峰行の山 薬師岳へ

 古峰ヶ原から入山し薬師岳・細尾峠を経て中禅寺湖歌ヶ浜へ至る峰修行で、古来から日光峰行の行者たちが修行してきた山々の1つ、薬師岳(標高1420メートル)を訪れた。

 旧国道122号線からの薬師岳(双耳峰)

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 登山口は細尾峠。
 (細尾峠の場所はここをクリック)

 日足トンネルの開通後、ほとんど使われなくなり、荒れた旧国道122号線を利用して、細尾峠登山口へ(細尾峠で通行止めになっており、足尾側へ通り抜けできないので注意)。
 (旧道への入口の場所はここをクリック)

 駐車場はなく、道路横に車を駐める。

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 細尾峠から50分ほどの登りで山頂へ着く。

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 山頂の横には、ひっそりと苔むした石の祠が祀ってある。

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 北西方向の眺望に優れ、女峰山から男体山までが一望できる。
 (今日は雲にかくれているが・・・・・)

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 時間があったので、夕日岳・古峰ヶ原とは反対の、三ノ宿山へ向かう尾根筋を歩いてみることにした(本当は路に迷っただけ)。

 1時間ほどすすむと、南側の展望のひらけた、石祠の祀られているヤセ尾根へ出た。

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 ちょうど真正面(南)に夕日岳を望むことができた。

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 残念ながらこの時期、登山路に草花は見られなかった。
 ただ、ブナの実が多く落ちていた・・・・・。

 ブナの実

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 赤ヤシオや白ヤシオ、トウゴクミツバツツジが多く見られ、4月下旬から5月にかけて訪れるのが最適の山らしい。

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2009.06.14

思川源流の山 地蔵岳へ

 粕尾峠への峠道から、そのピラミッド型をした山容がよく目立つ、思川源流の地蔵岳(標高1274メートル)を訪れた。

鹿沼足尾線からの地蔵岳

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 粕尾峠の空き地(車5台程度)へ車を駐め、峠から250メートル程度足尾寄りに下った登山口から入山する。

 梅雨入りし、今にも泣き出しそうな空模様のなか、湿気をたっぷり含んだ大気と林床のため、快適な山歩きにはほど遠い。
 雲がひび割れ、所々に青空が見え、薄陽がさしてくれないだろうか・・・・・
 
 林床にはギンリョウソウ(別名 ユウレイタケ)が目立っていた。

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 登山口から15分程度の場所に、地蔵平と呼ばれる草地(湿地)へ出る。
 右手の大木の下に大小2体のお地蔵様が並んでいる。大きな地蔵は「頸欠地蔵」と呼ばれている。なんでも200年も前から立っているらしい。

 頸欠地蔵

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 この地蔵平を横切り、粟野方面へ5分程歩くと「思川源流」へ出る。
 なんてことはない、小さな沢・・・・・
 水が飲めるかと汲んでみたものの、枯れ葉や土の色素がしみ出し、近くに鹿の骸もあったため、水くみは断念。

 思川源流

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 地蔵平へ引き返し、地蔵岳頂上を目指す。
 地蔵平には、フタリシズカが群生していた。

 フタリシズカ

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 地蔵平から30分ほど急登すると、小さな祠のある山頂に着く。
 ガスがかかっていて眺望はなし。晴れていれば、東側の眺望が得られ、勝雲山が良く見えるはず。

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 地蔵岳山頂から、前地蔵岳へ行こうと考えていたが、雲が増して低く垂れこめ、不快な梅雨の雨が降り出しそうな、この天候では、来た道を引き返すしかあるまい。

 太陽のありかがやっとわかる程度の空模様でも、時々薄陽のさす時がある。
 すると山全体に響き渡るエゾハルゼミの声。

 エゾハルゼミ

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 「木々がこんなにも新しい葉をやわらかにひろげているのに、そして私の心がこんなにもその声を期待しているのに、その蜩に似た小さい体を、いったい何処の小枝のかげに隠しているのだろう。恐らくこの見渡すかぎりの繁みに、ほんの僅かの気温の上昇を、息をのんで待っている彼らは無数である。その無数の蝦夷春蝉の中には、気紛れに鳴き出す一匹の変わりものもいないとは。
 今ここで、彼らを一斉に鳴かせるためには、たった一匹をそそのかして、声をださせればいい筈だと思うのだが、それは結局、急ものあいだからちらっと顔を出す太陽以外には出来ないことなのである。」
    
       串田 孫一 著 「新選 山のパンセ」 1995年 岩波書店 刊 より抜粋
 
 時折大合唱する蝦夷春蝉の鳴き声をききながら、山頂から粕尾峠までは30分ほどで下ることができる。

 粕尾峠

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2009.06.08

早春の尾瀬 富士見峠からアヤメ平・横田代へ

 6月7日、ミズバショウのピークを迎え混雑する尾瀬ヶ原や尾瀬沼を避け、山上湿原のアヤメ平を目指した。 

 群馬県側の尾瀬への入口の1つである富士見下より入山し、富士小屋で小休止。
 富士見峠から富士見田代を過ぎると、群馬県側の眺望の開けた開放的な稜線歩きとなる。
 前方には、目指すアヤメ平。
 まだ「冬」の色濃く、アヤメ平下の山腹には雪が残っている。

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 富士見田代から木道をたどることおよそ15分程度で、アヤメ平へ到着する。
 残念なことに尾瀬ヶ原方面は雲に閉ざされ、至仏山も燧ヶ岳も見ることができなかった。
 至仏や燧の眺めを期待していただけに、とても悔やまれる・・・・・。

 「戦前私は数回尾瀬へ行った。十月半ば雪に降られながら三平峠を越えたこともあれば、初夏の富士見峠を越えたこともあった。この峠の近くのアヤメ平から、広い原の向こうの果てに、遮るものもなく燧岳の全容を望んだ時は、天下一品という気がした。おそらく燧の示す最も美しい姿だろう。それは胸の透くような伸び伸びした線を左右に張って、ほぼ純正なピラミッドであった。同じピラミッドでも底辺が長いので、余計立派に見えた。」

         深田 久弥 著 「日本百名山」 1994年 新潮社 刊 より抜粋 

 雲の上の楽園:アヤメ平(標高1969メートル)

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 昭和30年代のオーバーユースが原因で荒廃した湿原の回復作業が、昭和44年から進められているが、いまだに完全回復にはほど遠いらしい。

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 アヤメ平から、さらに10分ほどで、この稜線上の最高地点、中原山(中ノ原三角点)へ出る。この周辺の樹林帯には、まだまだ残雪が多く、雪の上を注意して歩かなくてはならない。

 残雪の中のトレイル

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 中原山の道標からしばらく下ると横田代。
 アヤメ平に比べると小さな湿原だが、水芭蕉やショウジョウバカマなどが見られた。

 横田代(標高1860メートル)

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 アヤメ平から横田代の山上湿原で見られた山野草の数々・・・・・

 咲き始めたばかりのチングルマ

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 淡いピンクの壺状の花をつけたヒメシャクナゲ

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 ミツバオウレン

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 そして、これも咲き始めたばかりのイワカガミ

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 タテヤマリンドウ

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 尾瀬全域で、今がピークの水芭蕉・・・・・

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 ショウジョウバカマなどなど・・・・・

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2009.06.07

早春の尾瀬 富士見下から富士見田代へ

 尾瀬ヶ原南部の稜線上に広がり、かつては「雲の上の楽園」と呼ばれたアヤメ平をはじめとした早春の山上湿原を訪れた。

 今回の尾瀬への入山地点は、群馬県側の入口の1つである富士見下。
 30台程度の駐車場(空き地)から、6.3キロの林道を、峠目指してひたすら登る。

 新緑がまぶしい林道沿いの風景

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 林道沿いではノビネチドリ(?)に出会うことができた。

 ノビネチドリ
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 なんと白花タイプのノビネチドリ(?)も・・・・・珍しい
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 およそ2時間あまりで、富士見峠(標高1883メートル)に到着。
 峠には、富士見小屋が営業しており、チップ制トイレも設置されている。

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 富士見峠に咲いていたサンカヨウの花

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 富士見峠から鳩待峠方面へ進むと、アヤメ平と尾瀬ヶ原(竜宮)への分岐へさしかかる。
 ここには富士見田代があり、天気が良ければ池塘の青い水面に燧ヶ岳の姿が映しだされる。しかし、今日はあいにくの雲の中で、何も見えない。

 稜線上は、まだまだ「冬」が色濃く残っている・・・・・。

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 富士見田代から、稜線に沿って敷かれた木道を、アヤメ平へと向かう。
 明るく開放的な稜線歩き・・・・・天気が良ければもと素晴らしいのだが・・・・・

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 山上の稜線上からは、今歩いてきた林道や、遠く戸倉の街が一望できる。

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