思川源流の山 地蔵岳へ
粕尾峠への峠道から、そのピラミッド型をした山容がよく目立つ、思川源流の地蔵岳(標高1274メートル)を訪れた。
鹿沼足尾線からの地蔵岳
粕尾峠の空き地(車5台程度)へ車を駐め、峠から250メートル程度足尾寄りに下った登山口から入山する。
梅雨入りし、今にも泣き出しそうな空模様のなか、湿気をたっぷり含んだ大気と林床のため、快適な山歩きにはほど遠い。
雲がひび割れ、所々に青空が見え、薄陽がさしてくれないだろうか・・・・・
林床にはギンリョウソウ(別名 ユウレイタケ)が目立っていた。
登山口から15分程度の場所に、地蔵平と呼ばれる草地(湿地)へ出る。
右手の大木の下に大小2体のお地蔵様が並んでいる。大きな地蔵は「頸欠地蔵」と呼ばれている。なんでも200年も前から立っているらしい。
頸欠地蔵
この地蔵平を横切り、粟野方面へ5分程歩くと「思川源流」へ出る。
なんてことはない、小さな沢・・・・・
水が飲めるかと汲んでみたものの、枯れ葉や土の色素がしみ出し、近くに鹿の骸もあったため、水くみは断念。
思川源流
地蔵平へ引き返し、地蔵岳頂上を目指す。
地蔵平には、フタリシズカが群生していた。
フタリシズカ
地蔵平から30分ほど急登すると、小さな祠のある山頂に着く。
ガスがかかっていて眺望はなし。晴れていれば、東側の眺望が得られ、勝雲山が良く見えるはず。
地蔵岳山頂から、前地蔵岳へ行こうと考えていたが、雲が増して低く垂れこめ、不快な梅雨の雨が降り出しそうな、この天候では、来た道を引き返すしかあるまい。
太陽のありかがやっとわかる程度の空模様でも、時々薄陽のさす時がある。
すると山全体に響き渡るエゾハルゼミの声。
エゾハルゼミ
「木々がこんなにも新しい葉をやわらかにひろげているのに、そして私の心がこんなにもその声を期待しているのに、その蜩に似た小さい体を、いったい何処の小枝のかげに隠しているのだろう。恐らくこの見渡すかぎりの繁みに、ほんの僅かの気温の上昇を、息をのんで待っている彼らは無数である。その無数の蝦夷春蝉の中には、気紛れに鳴き出す一匹の変わりものもいないとは。
今ここで、彼らを一斉に鳴かせるためには、たった一匹をそそのかして、声をださせればいい筈だと思うのだが、それは結局、急ものあいだからちらっと顔を出す太陽以外には出来ないことなのである。」
串田 孫一 著 「新選 山のパンセ」 1995年 岩波書店 刊 より抜粋
時折大合唱する蝦夷春蝉の鳴き声をききながら、山頂から粕尾峠までは30分ほどで下ることができる。
粕尾峠
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