奥只見 銀山平
開高健の小説「フィッシュ・オン」に記されるなど、釣り師の間では有名な、新潟県奥只見の銀山平を訪れた。
その「フィッシュ・オン」には、銀山平のことをこう記している(開高健が実際に銀山平を訪れたのは1970年、昭和45年)。
「新潟県北魚沼郡湯之谷村銀山平というところは上越線の小出駅でおり、・・・・・・山をぐるぐると巻きながら雲のなかへ入っていくと標高1200メートルか1300メートルか、枝折峠というちょっと凄みのある峠に達する。そこからまた500メートルほどをぐるぐる巻きながらおりていくと、林に靄が流れている、湖水の光る小さな盆地にたどりつく。この道のどこかに一点があって、雲や光線のいくつかの偶然がうまく手伝ってくれた黄昏だと、湖岸いったいがちょうど荒涼としてスコットランド高地地方にそっくりと映ることがある。」
「銀山平は一年のうちでほぼ半年近くが雪で覆われる。電気も、ガスも、水道もない。年賀状が五月に配達される。電報や郵便物は速達配達区域外になっているので麓の村から便があったときに持ってくる。コゴメ、ミズナ、ワラビ、ゼンマイ、フキのとう、ナメタケ、ヤマブドウなど、山菜は豊富に発生するが季節をすぎると食料は何もかもを小出の町までトンネルを十八もくぐって自動車で買い出しにいかなければならない。」
現在の銀山平は、2001年(平成13年)に、銀山平森林公園内に各宿が移転し、開高健が逗留した「村杉小屋」も「フィッシングハウス村杉」を経て「村杉」として営業している。
また、関越道小出ICから、奥只見シルバーラインを通ることで、ぐるぐる巻きながら枝折峠を通る必要がなくなった。もちろん電気もガスも水道も通っている。
白銀の湯
ただ 「枝折峠からおりていくと湖岸に五、六軒の小さな宿と飯場小屋があるほかは人工物が何も見えないので・・・・・・」といった状況はあまり変わっていないのではないだろうか。
人工物といったら、奥只見湖畔の船着き場とお土産屋、国道352沿いの数軒の宿、銀山平森林公園内の六軒の宿と「白銀の湯」、そして北ノ又川沿いの開高健記念碑と監視小屋。
いわゆる集落というものが見当たらない。
そして北ノ又川の流れも当時のまま流れているのだろう。